被害者と司法を考える会 メディアセンター
最近のニュース
子どもだけの「自己責任」とする
少年法改正をこのまま進めて良いのでしょうか?
今、私たちが願うことは子どもの「自己責任」として、刑事罰も止むなしという厳罰化の流れを見直したい、ということです。
私は被害者遺族として被害者支援をしたり、被害者を出してしまった人の立ち直りも支えてきましたが、非行や犯罪の原因となる事柄には必ず理由があります。
18・19歳という大人に近づいた時期をどのように過ごして行くかによってその後の人生は大きく変わります。社会に背を向けて生きる道を選ぶのか、社会を信頼して進むのか、それは子ども達だけに背負わせる課題ではなく、私たち全員の課題だと思います。
大人や社会が温かく見守り、被害者も含め全ての関係者を保護するような仕組みがない中で、加害者の「自己責任」として、厳罰に処して解決を図ろうという仕組みにはどうしても違和感が残ります。
私たち「被害者と司法を考える会」運営委員会でも少年法の「改正」の動きは看過できないという立場から議論を重ね、少年法の適用年齢引き下げを食い止めるためにさまざまな角度から働きかけを続けてまいりましたが、改正の方針が変わる兆しが見えません。
最後の手段として、私たちの意思を形にし、皆様に届けていくために今回の出版を決意いたしました。
出版する書籍について
出版する書籍名は『18・19歳非行少年は、厳罰化で立ち直れるか』です。
「子ども達が一人でも社会や大人達を信頼して前に進めるような少年法であり続けて欲しい」という願いを込め、大上段に構えた目線からの発信ではなく、幅広く多くの方のメッセージを集めたものや、こういった活動の先頭に立っている人達からの生の言葉を詰めたものになる予定です。
少年法は日本が世界に誇れる法制度だと思います。保護主義を理念とする考え方は甘いという考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、少年法は刑事罰と異なり、心の内面まで入り込み内省を促すことも知られています。
多くの人がこの書籍を手に取って頂き、少年法の素晴らしい点を再確認して頂き、厳罰化の流れに一石を投じたいと思います。これは一朝一夕にして成し得るものではありませんが、少年の健全な成長だけでなく、少年法も成長発展させていくためのお力をどうかお貸しください。
【書籍の詳細】
書名:『18・19歳非行少年は、厳罰化で立ち直れるか』
出版予定時期:2021年5月中旬
・はじめに………片山徒有
・巻頭座談会 18・19歳非行少年の立直りと少年法の改正(森野俊彦(元家裁裁判官)+伊藤由紀夫(元家裁調査官)+八田次郎(元小田原少年院長)+鄭裕静(青山学院)+川村百合(弁護士)+司会:片山徒有)
第1部=18・19歳非行少年の現状と少年法改正
少年法改正は何を目指しているのか(改正の背景と法制審の経過)………新倉修
18・19歳非行少年の現状(刑事政策)………佐々木光明
18・19歳非行少年の現状と家裁(家裁実務) ………伊藤由紀夫
18・19歳非行少年の矯正………八田次郎
推知報道禁止の撤廃と少年の立直り(報道問題)………佐々木央
第2部=Q&A 18・19歳非行少年の立直りと少年法………佐々木光明+新倉修
第3部=18・19歳の少年事件事例集(立ち直った元少年たち)………伊藤由紀夫執筆・監修
第4部=少年院出院者は語る………少年院出院者
第5部=一言メッセージ/少年法はもっと生かせる!
資料 各団体の反対声明、最終答申、改正要綱案または法案(国会提出)など【10頁】 全体の頁数とで調整
あとがき………川村百合
被害者と司法を考える会
少年法改正を許さない「声明書」
法務省は、非行少年の実務に携わる第一線の専門家の意見をきかずに、少年法を改正しようとしています。最悪のシナリオ(少年法の適用年齢を18歳未満に引き下げる)はかろうじて回避されましたが、中身は処罰と監視を強化する古臭い「刑事政策」の焼き直しです。「家庭に愛を、少年に希望を」という少年法に、ハムラビ法典の時代から続く「目には目を、歯には歯を」の仕組みを拡大することになります。皆さんは、家庭には愛より、ムチがふさわしいと思いますか。
刑罰の適用範囲を広げたり、刑期を延ばしたり、「犯情の軽重」で非行の深刻さを判断したりすることは、逆効果です。少年法の肝である調査や鑑別の形骸化や劣化を招き、現在まで研究者や実務家が営々と積み重ねてきた努力を無にするものです。また、保護処分の少年院送致にしても、当初からから期間を決めて、収容継続ができないのは、少年院と家裁の連携に乖離をもたらすもので、そもそも教育は最初から期間が決められるものではありません。非行少年でも、「尊厳のある人間」として遇されるなら、みるみる問題行動を克服して、社会にとっても有用な人材となったという例は、たくさんあります。
選挙権を与えられ、親の監護から離れて、一人前の責任を与えられたからと言って、いったん犯罪に手を染めれば、実名報道にさらされ、立ち直りのための資格取得の扉も閉ざされ、疎外される人をつくりだすことが許されるのでしょうか。政府も賛成する国連の持続的開発目標は「だれ一人取り残さない」(No One Left Behind)と言っています。
このように少年法を改正する必要はないのです。わたしたちは、少年法の改正法案を絶対に許しません。
2021年4月6日
被害者と司法を考える会 代表・片山徒有